i-ha’s light conversation

AMV/MAD、動画編集がメイン。アニメ、マンガ、小説等の感想もたまに呟きます。

小説家、漫画家、作詞家、そして動画作家の為の構成学 物語の作り方 31選

(構成の例として、一部、ウマ娘エヴァンゲリオン等を使用させて頂いております)

 

ネット上にも、文章のコツ、構成のコツと言う物を、簡潔にまとめた物があまりなかったので、自分なりにまとめてみました。

起承転結、序破急などの、構成の基本を理解している、自分の作品で使用出来る事が前提です。視聴者は、これら構成の基本に則って、作品を見ています。

そこを外す事によって、視聴者の意表を突き、伝えたい事を印象付ける。
伏線や緩急、比喩等の構成のテクニック、演出を紹介しています。

最初のうちは、小説や漫画のあらすじが決まった時点、動画や詩の構成がある程度決まった時点で、この記事に戻り、下記の構成テクニックを追加して頂くと良いかも知れません。

これらは絶対に正しく、真似すれば良い等と言う物ではありません。
少しでも皆様が構成を考える時の足しになればと思います。宜しく御願い致します。


■ 構成の基本

① テーマ

訴え掛けるテーマがない作品、テーマがあってもそれを汲み取れなかった作品は、手が込んだ、素晴らしい映像美であるほど、勿体ないと感じます。
テーマは凝り過ぎると受け取れない人が増えますし、単純だと大勢の人が受け取れますが面白みが減りますので、とても難しいです。

大勢の人に訴えかけたい場合、単純でも、グッとくるテーマを、しっかりと描く事が重要になると思います。
逆にマニアックな人をターゲットにする場合、一般人では受け取れないであろう、少し複雑な、難しいテーマを付けると良いかも知れません。

短い動画の場合、テーマはタイトルや解説文、動画内テキストなどで少し語った方が良いかも知れません。一般層には、これくらいしないとなかなか伝わらないかと。
勿論、映像だけで伝わるのが一番なのですが、タイトル等にテーマを盛り込むプロも多いですし、伝える努力の一つとしては全然アリかと思います。


② ストーリー

起承転結が基本ですが、この記事は応用編なので、それを外して行きます。

起承転結を「外す」と言っても、これは基本で、「外し」てはいけない要素です。
つまり、起承転転結、起承転結結結、結起承転結、等にすると言う事です。

一般の人は、物語が起承転結だと思い込んでいるので、順番を変えたり、そこにもう1回「転」や「結」を入れると、簡単に予想を超える事が出来るのです。
ただし、それで物語が分かり辛くなり過ぎたり、伝わらなくなってしまうのには注意が必要です。

長い話を書く場合は、起承転承転承転結となる事が多く、何度も上げて落とすを繰り返す必要があります。
しかも、その上げ下げの幅はどんどん広くする必要があり、最後に、最大の試練が待っていなければなりません。

例えば、「アニメ ウマ娘 season2」では、主人公は三度骨折して再起不能とまで言われ、最後には主人公を励まし続けてくれたライバルまで走れなくなると言う試練を迎えます。
また最終回は、レースで勝利すると言う結があり、ライブをすると言う結があり、成長した子供たちと言う結があり、ライバルの復活と言う結があり、エンディングと言う結があると言う、結が5回もある作品となっているのですが、これが、非常に深い満足感を生む原因となっているのだと思います。

 

 

■ 以下は細かいテクニックですので、このテーマとストーリー、二つを必ず意識しながら使って下さい。


③ 論文技法、序論(イントロダクション)

論文は主に、序論、本論、結論の3つに分かれます。
最初に大切な事を明示してから本論に移り、最後に結論を述べる手法です。
最初の序論と、最後の結論が、ほぼ同じ物語を語る事になりますが、それ故、訴え掛けたい事、テーマをしっかりと相手に伝えるのに優れます。


④ 伏線(フラグ)

後述する事柄を、前の方で仄めかしておく技法です。
序論の様に完全に明示しませんが、後でそれが伏線であったと気が付いてもらえないと意味がありません。
伏線を使う時には、それを隠すのも大切ですし、逆に回収される時には強調する事も大切だと思います。


⑤ 布石(ストラテジー

布石は、伏線とは違い、物語の終盤へ向けて、様々な要素を見える形で配置。
それらが集まって、終盤の盛り上げを行うもので、序盤と終盤に、同じキャラや、同じアイテムなどが、多数登場する事になります。
動画の場合は、同じ様な演出を使って、これらが全て布石であると、印象付けても良いかと思います。


⑥ ミスリード、燻製ニシンの虚偽 (レッド・へリング) 

推理小説で良く行われる技法。嘘の犯人を見せておいて、最後に真犯人を明かします。
タイトルからミスリードを誘ったり、死んだと思わせておいて生きているなど、二重三重にミスリードを行ったりもします。
特にタイトルが、テーマと逆の意味だった等は、短い動画でもやり易いかも知れません。


⑦ 相対(リレイティブ)

二人のキャラクターの共通点や相違点等を描いて行く技法。
三人の場合もありますが、四人では多過ぎる気がします。
相対技法を、一つの動画ではなく、二つの動画、作品で行ったりも出来るかと思います。


⑧ 焦点(ズーム、フォーカス、クローズアップ)

大きな物から、徐々に小さい物を描いて行く技法。
宇宙から地球、風景から人、人から瞳のアップなどの様に、文章でも動画でも良く使われる手法です。小さい物から大きな物へ移る事は、ほぼほぼありません。
たったこれだけの事ですが、視聴者の理解度が跳ね上がりますので、起承転結の「起」で使う事が特に薦められています。


⑨ 緩急(テンポ、ペース)

大きな緩急から、小さな緩急まで、緩急にも色々あるかと思いますが、大きな緩急の方がより重要であると言われます。
つまり複数ではなく、一作品に一つ、ここと言う大きな緩急を付けるのです。
作品が完成してから、若しくは完成がイメージ出来たら、緩急をもっと大きく出来ないか確認するプロも多いかと。


⑩ スローモーション、フレーム補間、バレットタイム

映画マトリックスで使われた、銃弾をスローモーションで避ける通称バレットタイムと呼ばれる手法が有名になりました。
AMV(Anime Music Video)でも、かなり昔から、流れる髪の美しさを、フレーム補間を行って強調したりしています。
強調したい所、見せ場を、しっかり描くのは、どんな作品でも大切かと思います。


⑪ 出崎(でざき)演出

逆光、止め絵、繰り返し、画面分割、パン(水平なカメラ移動)を用いる演出として有名です。
どれか一つでも強調するのに有用ですが、これを組み合わせた所も凄く、我々も、様々な演出、構成を組み合わせる努力が必要だと考えさせられます。
また、ヘリコプターのローター音だけで、作画せずにヘリコプターが来たと視聴者に思わせたりもしていたと言われています。これは、静止画MADなどで有用な手法かも知れません。


⑫ モノローグ

キャラクターが一人で喋る事を指しますが、そのままでは、全然良い構成とは言えません。
戦闘中に回想を交えたり、アイテムを画面に映しながら、そこに込められた思いを描いたりする方法が考えられます。
感情移入すべきキャラクターを分かり易くするのは非常に重要なので、モノローグを使わない場合でも、主人公はしっかりと描く必要があるかと思います。

 


■ 修辞法(figure of speech、レトリック)

日本では文彩、彩とも言われます。これを構成で使う為に名前だけお仮した物であり、修辞法の解説ではありませんので御注意下さい。
しかし、一つでも作品で上手く使えれば、良い印象を与える事が出来ると思いますので、是非、参考にして頂ければ幸いです。


⑬ 比喩(ひゆ)

物事を、それと共通項のある別の物に置き換えて表現する技法で、主に直喩と隠喩に分かれます。
赤は血や死、翼は飛躍、桜は儚さと美しさ、三角は恋愛関係を表したりします。1回ではなく何回も使う事により、より強調されます。
また悲しみを表現したくても、「悲しい」と文字で書いたりせず、こぶしが震えてる様子などを描く様にするのは大事かと思います。


⑭ 擬人(ぎじん)

比喩の一つで、人でない物を、人に例える技法です。人でない物に対して、感情移入させる効果もあります。
ペンダントを、それを贈った人に例えたり、海を母に、風を死者に、蟻を社会人に例えたりでしょうか?
動画ではフェードを使って、二つの物を結合するのも有効かも知れません。


⑮ 擬態(ぎたい、オノマトベ)

「ニコニコ」や「ワンワン」等、主に擬態語・擬音語・擬声語に分かれます。
動画には直接関係無い様にも見えますが、音を使って表現すると考えると、意外と使えるのかも知れません。
銃声や、扉の音、獣の遠吠えなど、動画に入れると、そのシーンを強調出来ます。比喩とは逆で、1回だけにした方がより強調出来ると思います。


⑯ 倒置(とうち)

順序を倒置(逆転)させ、目的を強調する技法。最初や最後に来る情報が重要になる場合が多いです。
結起承転の様に、全体の構成を倒置すると言うより、プレゼントを見て喜ぶ顔の後に、プレゼントが何であったのか見せる手法と言った感じでしょうか?
タイトルを中盤や最後に持って来て強調したりも出来ますが、そこが構成の中心となる様な、上手い使い方をしないと意味がありませんので注意が必要かも知れません。


⑰ 列挙(れっきょ、反復、リピート)

同じ言葉、似たシーンを連続して使用する技法。これは重要な言葉やシーンを連続して使う技法で、簡単かつ強力です。
結論を繰り返して印象付けるだけでなく、列挙、反復した後に結論を描くのも強力で、フラストレーションを溜める事も出来ます。
エヴァンゲリオンの「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……やります! 僕が乗ります!」と言うシーンが印象深いのは、この技法もあっての事かと思います。


⑱ 漸層(ぜんそう、クライマックス、エスカレート)

徐々に表現を強めていく技法。列挙に近い技法で、合わせて列叙とも呼ばれますが、結論が別にある訳ではなく、エスカレート自体を見せる技法です。
特にギャグにおいては基本とも言える技法なので、似た様なシーンを、同じタイミング、同じスピード感でエスカレートさせるのが得意な人も多いかと思います。
エスカレートした最後に、全く別のオチを与える「反漸層法」と言う手法もあります。


⑲ 押韻(おういん、韻を踏む、ライム)

詩歌などで同じ音を決まった場所に繰り返し使う技法。
特に作詞において良く使われる技法ですが、動画では似た様なシーンの始まりに、同じ演出を使ったりするのも、これに近いかと思います。
情報を関連付け、まとめて考えてもらう事が出来る為、作品がスッキリする効果も高いです。


⑳ 体言止め(たいげんどめ、ストップ)

文章の場合、名詞止めとも言い、終止形を省き、強調したり、余韻を残す技法です。
動画の場合、キャラクターの行動を見せてから名前を表示する、キャラクター紹介の様な物が、これに当たるでしょうか?
画面を止める事によって、リズムを取る事も出来るかと思います。


㉑ 省略(しょうりゃく、オミット)

余韻を残し、読者に続きを連想させる意図的な省略で、小説に多い技法です。
ネタバレを避ける為に、敢えて結論を描かなかったり、描かなくても続きが容易に想像出来る場合、動画時間を短縮し、内容を詰め込む役に立つかも知れません。
動画の最後のシーンをフェードアウトさせたりした場合は、視聴者に考えさせる時間を与える効果が高いので、使用に一考の価値はあるかと思います。


㉒ 敷衍(ふえん、詳細、肉付け)

詳しく説明する、短くても良い物を敢えて長くし、意味を強調する技法。
これは文章でも使用するのが難しい技法です。動画で使用した場合も、無駄に長いと言う感想が増えかねません。
ちゃんと意味を強調する役に立っているか、短くても済むものが長くなってしまっていないか、構成が出来たら一度確認して頂きたい事柄です。


㉓ 誇張(こちょう、強調)

全米が泣いた」の様に大げさに強調する技法。「2万%」の様に数字を使うのも有効です。
動画であれば、走っているスピードを早送りにしたり、爆発を派手にしたりと、皆様、普段から使っているかも知れません。
意図して、その様なシーンを増やせれば、他の動画より一歩抜きん出て、印象に残る、伝えたい事が伝わる作品に仕上がるかと思います。


㉔ 反語(はんご、皮肉、アイロニー、アンチテーゼ)

反語は疑問形で書いているのに、結論が明らかで、それを強調する技法。
若しくは肯定しているのに、結論は明らかに逆で、強い皮肉となっている技法です。
成功を描くには挫折も描く必要があり、挫折を描くには成功を描く必要がある訳で、多くの人が行っているかと思いますが、思い切って挫折だけ描き、成功は想像に任せても良いのかも知れません。


㉕ 対句(ついく、対語、対応語)

対句は「温故知新」などの様に、2つ以上の句を対照的に用いる、漢文のテクニックです。
今と昔、人と獣、天と地、春夏秋冬など、反語と似た様な感覚で使う事になるかも知れません。
並列で描くか、ここから逆を描きますよと言う場面転換のタイミングで、一度動きを止めて、視聴者に心の準備をさせた方が分かり易いかも知れません。


㉖ 撞着(どうちゃく、矛盾、相反、背反)

「公然の秘密」の様に、矛盾している表現をわざと使用する技法です。
ピカレスク物の様に悪の側を描いた作品や、ホラーやスプラッタ等で、正義や命など逆の物も連想させる事が出来れば、素晴らしい作品になると思います。
やさしい不良、かわいい悪魔などの様に、容姿的なギャップも、強調する役に立つかも知れません。


㉗ 緩叙(かんじょ、二重否定)

「悪くない」等の様に、言葉の逆の意味を言って、それを更に否定したり、言いたい事を遠まわしに言って、意味を強める技法。
ある意味、皆様の大好きなツンデレですw
思っている事と逆の事をキャラクターに取らせたりする訳ですが、そのキャラクターがツンデレであると言う事を明示する必要はあるかも知れません。


㉘ 抑言(よくげん、慎ましやか)

重大な事を、わざと小さく、控えめに言う、謙遜する、緩叙に近い技法です。
ツンデレとは逆の、気弱な眼鏡キャラ等に多いかも知れません。片腕を失っているのに「かすり傷だ」等と報告してしまう優しい戦士なども良いかも知れません。
見栄えはしないので、あまり動画では使えないでしょうか?


㉙ 呼び掛け(よびかけ、コール)

キャラクターに対して呼びかけるのと、視聴者に対して呼びかけるのと二通りの方法があるかと思います。
シーンをただ切り替えるのではなく、呼びかけてから切り替えると、そのキャラクターへの焦点がずっと深くなりますし、視聴者に呼びかければ、より深く考えてもらう事が容易になるので、非常に強力です。


㉚ 設疑(せつぎ、質問、クエスチョン)

疑問を投げかけ、視聴者にそれを自ら考えてもらったり、一定の答えに誘導する技法です。
呼び掛けに近いですが、回答を期待して使われると言う点が違います。
キャラクターに対する設疑は、結局、視聴者も考える事になるので、やってる事は同じです。神に対して答えの無い問をする様なシチュエーションも良いかも知れません。


㉛ パロディ(オマージュ、二次創作)

有名な台詞や表現、出来事などを借用して揶揄したり茶化したりする手法です。
MAD自体がある種のパロディですが、それを更に入れ子構造にした、OPパロ等がこれに当たると思います。原作自体がパロディを用いている場合は更に複雑です。
パロディは、それがパロディであると伝わらないと面白くありません。マイナーなパロディである場合は、比較動画などを作る事も検討して良いのかも知れません。

 

■ まとめ

他にもあるかと思いますが、取り敢えず、これくらいで良いでしょうか?(設疑法)
これらの技法は、たくさん使ったら作品が滅茶苦茶になってしまいますので、一つ入れる事を是非考えてみて欲しいです。
一つ入れるだけでも、起承転結が崩れ、伝わり難くなってしまいますので、十分に、十二分に注意して使って頂けると幸いです(誇張・漸層)